1 00:00:01,832 --> 00:00:04,028 我らの敵たちの力への渇望が その歴史を源としているように 2 00:00:04,028 --> 00:00:07,564 自由を求める同盟国の不屈の意志もまた その伝統から生まれいでた 3 00:00:07,564 --> 00:00:10,528 彼らの果てなき死闘を理解するには それを育んだ彼らの過去を知り 4 00:00:10,528 --> 00:00:13,084 そして理解せねばならない 5 00:00:13,084 --> 00:00:18,608 この映画にはそのための映像が 無償で使用されている 6 00:00:18,608 --> 00:00:27,100 他にもニュース映画や連合国の映像、 敵から接収した資料が含まれている 7 00:00:27,100 --> 00:00:31,100 全ての地図や図表は戦争省が制作した 8 00:00:31,100 --> 00:00:35,688 長時間にわたるため この映画は前後編に分かれている 9 00:00:41,328 --> 00:00:49,416 『なぜ我々は戦うのか』 7本の情報映画シリーズ 10 00:00:49,416 --> 00:00:57,960 第5回『ロシアの戦い』前編 11 00:01:03,608 --> 00:01:06,784 『ソビエト・ロシア国民に勝る勇気は 歴史上存在した試しがない』 12 00:01:06,784 --> 00:01:08,784 -ヘンリー・L・スチムソン 陸軍長官 13 00:01:08,784 --> 00:01:12,588 『我々とその同盟国は ソ連の軍と国民に対し 14 00:01:12,588 --> 00:01:15,888 不滅の恩義を認める』 15 00:01:15,888 --> 00:01:19,896 -フランク・ノックス 海軍長官 16 00:01:19,896 --> 00:01:26,616 『ロシア兵の勇敢、そして攻撃精神は アメリカ軍の称賛するところである』 17 00:01:26,616 --> 00:01:31,320 -ジョージ・C・マーシャル 陸軍参謀総長 18 00:01:31,320 --> 00:01:36,192 『ソ連の英雄的、歴史的防衛を 私も称えたい』 19 00:01:36,192 --> 00:01:42,216 -アーネスト・J・キング 海軍作戦部長 20 00:01:42,216 --> 00:01:46,560 『(ロシアの)奮闘は その壮大さ、雄大さにより 21 00:01:46,560 --> 00:01:50,304 空前絶後の軍事的偉業となった』 22 00:01:50,304 --> 00:01:56,160 -ダグラス・マッカーサー将軍 南西太平洋地域司令官 23 00:02:04,588 --> 00:02:07,608 これはその壮大さ、雄大さの映画である 24 00:02:10,464 --> 00:02:13,056 これはその軍事的偉業の映画である 25 00:02:14,764 --> 00:02:20,904 これはナチの無敵神話を 永久に挫いた人々の映画である 26 00:02:21,752 --> 00:02:25,680 これは勝利、そして敗北の映画である 27 00:02:27,508 --> 00:02:29,184 ドイツの勝利、 28 00:02:30,988 --> 00:02:32,928 そしてドイツの敗北である 29 00:02:37,320 --> 00:02:38,952 このロシアをめぐり 30 00:02:39,576 --> 00:02:42,264 幾世紀も繰り返されてきた戦いについて これから見ていこう 31 00:02:42,960 --> 00:02:46,032 戦いこそがロシアの歴史を 埋め尽くしてきたのである 32 00:02:46,492 --> 00:02:48,528 1242年 33 00:02:52,588 --> 00:02:56,568 ドイツのチュートン騎士団が ロシア北東部に侵攻した 34 00:02:56,568 --> 00:02:59,400 そして古都プスコフを占領した 35 00:03:11,788 --> 00:03:18,648 団長フォン・バルクの指揮の下 地域の全領民が隷属を余儀なくされた 36 00:03:18,648 --> 00:03:21,984 それには彼らの首都 ノヴゴロドも含まれていた 37 00:03:32,788 --> 00:03:36,960 恐怖による支配の下、ロシアの民は 王子に采配を託した 38 00:03:36,960 --> 00:03:39,096 アレクサンドル・ネフスキーである 39 00:03:47,620 --> 00:03:51,984 1242年4月5日 ペイプシ湖上 40 00:03:52,344 --> 00:03:55,392 ロシアの民はドイツの武力と相見えた 41 00:04:13,492 --> 00:04:16,584 敵は装備の面でも 組織の面でも優れていた 42 00:04:17,016 --> 00:04:20,208 ルーシのために! 43 00:04:22,468 --> 00:04:25,152 だが彼らの胸には燃える勇気があった 44 00:04:25,872 --> 00:04:29,376 その激しい炎がドイツ軍を貫いたのだ 45 00:04:30,436 --> 00:04:36,436 『剣を取り我らに向かう者は、剣で滅びる』 -アレクサンドル・ネフスキー 46 00:04:37,180 --> 00:04:41,520 彼らの勝利は ロシア史の栄光の1ページである 47 00:04:42,868 --> 00:04:44,808 1704年 48 00:04:45,436 --> 00:04:48,720 再び侵略軍がロシアの地に攻め入った 49 00:04:50,236 --> 00:04:53,120 今度はカール12世の率いる スウェーデン軍である 50 00:04:53,120 --> 00:04:56,112 ロシアの民は再び祖国のため戦った 51 00:05:01,584 --> 00:05:06,528 ピョートル大帝の指揮の下 5年もの長い戦いの末 52 00:05:06,528 --> 00:05:09,648 ついに歴史的なポルタヴァの戦いで スウェーデンを破った 53 00:05:09,744 --> 00:05:12,072 突撃! 54 00:05:16,272 --> 00:05:20,424 スウェーデンの侵略軍は粉砕され ロシアから永久に追い出された 55 00:05:24,292 --> 00:05:25,704 1812年 56 00:05:28,348 --> 00:05:32,572 ナポレオンとその軍隊は ヨーロッパ中で勝利を収め 57 00:05:32,572 --> 00:05:34,680 モスクワへと進軍を続けていた 58 00:05:37,944 --> 00:05:42,360 侵略軍は入城を果たしたが 市中には火が放たれていた 59 00:05:42,988 --> 00:05:47,280 この時もロシア人は焦土作戦により 侵略者に抗戦した 60 00:05:47,364 --> 00:05:53,712 侵略者はまたもロシア撤退の長い行軍を 強いられることとなった 61 00:05:54,080 --> 00:05:56,112 1914年 62 00:05:56,336 --> 00:05:58,272 再びドイツ軍が侵攻した 63 00:05:58,272 --> 00:06:01,944 今度は「カイザー」 ヴィルヘルムの軍である 64 00:06:09,512 --> 00:06:13,032 この時ロシア国民は ツァーリの支配下にあり 65 00:06:13,032 --> 00:06:15,672 国民はドイツの砲火のみならず 66 00:06:18,960 --> 00:06:21,840 自国の抑圧や腐敗とも 戦わねばならなかった 67 00:06:22,520 --> 00:06:25,628 そして結局ドイツ帝国の崩壊により 68 00:06:25,628 --> 00:06:30,000 ロシアは1918年に占領された ウクライナとクリミアの 69 00:06:30,000 --> 00:06:33,216 喪失を免れたのである 70 00:06:33,604 --> 00:06:37,968 そう、700年にわたりロシア人は 戦いを強いられてきた 71 00:06:39,940 --> 00:06:43,032 征服者たらんとする者たちから 国土を守るために 72 00:06:43,256 --> 00:06:44,688 なぜだろうか? 73 00:06:45,072 --> 00:06:48,288 なぜロシア征服の試みは 幾度も繰り返されるのだろうか? 74 00:06:51,460 --> 00:06:54,576 おそらくその答えは ロシアそのものが示してくれるだろう 75 00:06:54,576 --> 00:06:58,248 これがロシアだ 地球上の陸地の6分の1を占める 76 00:06:58,608 --> 00:07:01,680 東の端から西の端までで 世界をほぼ半周する 77 00:07:02,208 --> 00:07:05,280 北は北極に臨み 南にはインドとの国境がある 78 00:07:05,812 --> 00:07:08,856 1つの国で実に2,300万平方キロ 79 00:07:09,872 --> 00:07:12,792 それはアメリカ3つ分以上 80 00:07:13,224 --> 00:07:16,536 北米全体でも 250万平方キロのお釣りがくる 81 00:07:16,948 --> 00:07:19,320 ロシアでは日が沈まない 82 00:07:20,088 --> 00:07:23,256 ヨーロッパに面した西の国境で 日が暮れるとき 83 00:07:23,692 --> 00:07:27,528 太平洋に面した東の国境では すでに日が上っている 84 00:07:32,528 --> 00:07:37,776 これがロシアである 正しくはソビエト社会主義共和国連邦だ 85 00:07:39,072 --> 00:07:43,272 深い山奥には金や銀に富んだ 分厚い鉱脈がある 86 00:07:43,872 --> 00:07:49,536 地下には大量の銅、錫 マンガン、ニッケル 87 00:07:49,660 --> 00:07:53,400 ホルミウム、ラジウム マグネシウム塩が眠っている 88 00:07:53,952 --> 00:07:56,088 ロシアは天然資源に富んでいる 89 00:07:56,720 --> 00:08:00,120 森林面積は930万平方キロに上り 90 00:08:00,392 --> 00:08:04,680 全世界の木材の4分の1が ロシアにある計算だ 91 00:08:05,712 --> 00:08:07,132 燃料も同様だ 92 00:08:07,132 --> 00:08:10,496 無尽蔵の石炭 93 00:08:10,496 --> 00:08:13,560 そしてより重要なのが石油だ 94 00:08:13,732 --> 00:08:16,872 年に2億1千万バレルを産出する 95 00:08:17,000 --> 00:08:23,136 地中から湧き出す「黒い黄金」から 世界の石油の15パーセントが精製される 96 00:08:23,840 --> 00:08:26,520 他には?鉄鋼石は? 97 00:08:26,952 --> 00:08:29,208 ロシアの埋蔵量は100億トン以上だ 98 00:08:29,360 --> 00:08:32,424 大量の鉄鋼を生産できる 99 00:08:32,476 --> 00:08:34,560 そう、ロシアの富は膨大だ 100 00:08:34,728 --> 00:08:37,968 農地は550万平方キロ 101 00:08:38,592 --> 00:08:42,360 肥沃な黒土は石炭や石油を産出するほか 102 00:08:42,360 --> 00:08:45,960 ヒマワリからハスまで あらゆる作物を育てる 103 00:08:46,468 --> 00:08:52,032 人々が大量に飲む茶 吸うタバコ 104 00:08:53,040 --> 00:08:54,816 ここでは綿花も育つ 105 00:08:54,816 --> 00:08:58,008 年に380万俵を生産する 106 00:08:58,256 --> 00:09:00,072 砂糖も生産されている 107 00:09:00,072 --> 00:09:03,456 牧草地では家畜がまるまると太り 108 00:09:03,456 --> 00:09:05,928 食用に供され 羊毛からは衣料品が作られる 109 00:09:06,940 --> 00:09:11,496 温暖な平地には見渡す限り 穀物畑が広がっている 110 00:09:11,716 --> 00:09:16,920 トウモロコシ、オーツ麦、ホップ、ライ麦 そして忘れてはならない小麦 111 00:09:17,376 --> 00:09:19,248 世界の3分の1を生産する 112 00:09:19,512 --> 00:09:22,176 そう、ロシアはとても豊かだ 113 00:09:22,176 --> 00:09:26,400 しかしロシアは 資源と農作物だけの国ではない 114 00:09:26,400 --> 00:09:28,872 人もまたロシアの資源である 115 00:09:35,120 --> 00:09:38,208 1億9,300万人の人口 116 00:09:45,416 --> 00:09:48,696 あらゆる民族、人種、宗教の民が 117 00:09:49,132 --> 00:09:53,760 ソ連邦を構成する 様々な共和国から集まっている 118 00:09:53,760 --> 00:09:59,760 話されている言語も100を超えるが みな同じ国の市民である 119 00:10:13,276 --> 00:10:18,240 この広大な地域への最初の入植者 大ルーシの子孫たるロシア人は 120 00:10:18,240 --> 00:10:21,432 1000年にわたり最大の人口を占めてきた 121 00:10:21,968 --> 00:10:27,168 ドン川流域の平野に住むコサックは 有名な騎馬部族である 122 00:10:38,352 --> 00:10:41,112 南西にはウクライナがある 123 00:10:51,366 --> 00:10:57,432 このソ連の「パンかご」地帯には 小ルーシたるウクライナ人が住む 124 00:10:57,432 --> 00:11:01,560 その隣にはモルドバ人 ベッサラビア人がいる 125 00:11:01,560 --> 00:11:05,808 この国の南の端は カスピ海と黒海に挟まれている 126 00:11:14,524 --> 00:11:20,888 アルメニア人、グルジア人 イングーシ人、チェルケシ人などが 127 00:11:20,888 --> 00:11:24,768 起伏の激しいコーカサスの峰々を 故郷としている 128 00:11:50,568 --> 00:11:57,240 ウズベク人、トルクメン人、キルギス人は ペルシャ、インドとの境界に住んでいる 129 00:11:59,792 --> 00:12:01,512 モンゴル人 130 00:12:10,112 --> 00:12:11,928 バシキール人 131 00:12:11,928 --> 00:12:13,392 トルコ・タタール人 132 00:12:13,804 --> 00:12:15,048 ブリヤート人 133 00:12:15,048 --> 00:12:16,512 ヤクート人 134 00:12:16,512 --> 00:12:18,912 彼らはウラル山脈の彼方に住む 135 00:12:20,336 --> 00:12:24,624 氷に閉ざされた地域にも 狩猟民族のサーミ人や 136 00:12:25,400 --> 00:12:28,296 入植者のラップランド人などが住む 137 00:12:31,424 --> 00:12:35,592 極北に未開の地があるかと思えば 138 00:12:36,360 --> 00:12:39,192 首都モスクワのような大都市もある 139 00:12:39,192 --> 00:12:48,072 古来の建築物、古来の文明が 現代の建築物、現代の文明に隣接している 140 00:12:48,056 --> 00:12:52,512 古いロシアの馬車が 今もモダンなリムジンと競争している 141 00:13:03,776 --> 00:13:06,168 工場労働者 142 00:13:06,224 --> 00:13:08,040 兵士 143 00:13:08,928 --> 00:13:10,512 レンガ職人 144 00:13:10,568 --> 00:13:12,336 交通警察官 145 00:13:12,916 --> 00:13:14,160 水兵 146 00:13:15,240 --> 00:13:16,136 リベット工 147 00:13:16,728 --> 00:13:18,168 学校の生徒 148 00:13:18,480 --> 00:13:19,656 農民 149 00:13:20,044 --> 00:13:21,000 看護師 150 00:13:21,580 --> 00:13:22,944 技術者 151 00:13:23,068 --> 00:13:24,336 窓清掃員 152 00:13:24,556 --> 00:13:25,968 女性店員 153 00:13:26,592 --> 00:13:27,528 主婦 154 00:13:28,376 --> 00:13:30,072 郵便局員 155 00:13:30,508 --> 00:13:31,824 ラジオアナウンサー 156 00:13:31,824 --> 00:13:33,216 スチュワーデス 157 00:13:33,432 --> 00:13:34,344 科学者 158 00:13:34,872 --> 00:13:35,952 タイピスト 159 00:13:36,360 --> 00:13:37,416 音楽家 160 00:13:37,112 --> 00:13:38,856 バレリーナ 161 00:13:48,532 --> 00:13:51,984 仕事が何であろうと どこに住んでいようと 162 00:13:51,984 --> 00:13:54,288 みなに共通する点が一つある 163 00:13:54,288 --> 00:13:55,920 それは自らの土地への愛だ 164 00:14:06,148 --> 00:14:07,608 これがロシアだ 165 00:14:07,828 --> 00:14:11,088 大きさ: 世界一 166 00:14:11,740 --> 00:14:14,520 天然資源: 無尽蔵 167 00:14:14,932 --> 00:14:18,504 人口: 1億9,300万 168 00:14:18,504 --> 00:14:20,232 これら3つが - 169 00:14:20,232 --> 00:14:22,632 歴史上のあらゆる征服者が ロシアを欲してきた理由だ 170 00:14:23,188 --> 00:14:26,880 そして、現代の征服者たらんと欲する者も そう書いている 171 00:14:27,052 --> 00:14:30,504 『新たな領域について語るとき ロシアへの考慮を欠いてはならない 172 00:14:30,504 --> 00:14:32,928 運命がその道を指し示している』 -アドルフ・ヒトラー 173 00:14:33,664 --> 00:14:40,008 そう、ドイツ人の侵略性は世代から世代へと 受け継がれてきたのだ 174 00:14:40,560 --> 00:14:44,472 今、ヒトラーのドイツは 世界征服を夢見ている 175 00:14:45,392 --> 00:14:48,192 この夢への対策はただ1つ - 176 00:14:48,192 --> 00:14:49,992 集団安全保障である 177 00:14:50,616 --> 00:14:56,952 このため1934年 ソ連は国際連盟に加盟した 178 00:14:56,980 --> 00:14:59,544 ソ連代表は幾度となく加盟国の前で 179 00:14:59,544 --> 00:15:03,888 攻撃を受けたあらゆる国に対して 共同行動により支援を行うべく 180 00:15:03,888 --> 00:15:05,928 合意を形成しようと訴えてきた 181 00:15:06,428 --> 00:15:09,192 『私の代表するソ連が連盟に 加盟した目的はただ一つ 182 00:15:09,192 --> 00:15:12,864 我々にとってかけがえのない平和を 守っていくためです』 183 00:15:13,104 --> 00:15:15,528 『国際連盟は今でも 共同行動により 184 00:15:15,528 --> 00:15:19,392 侵略を防ぎ、あるいは止めるのに 十分な力を持っています 185 00:15:19,392 --> 00:15:22,248 取引や妥協の余地はありません』 186 00:15:22,396 --> 00:15:27,984 いくつかの加盟国が侵略の阻止のため 集団制裁を訴えたが効果はなく 187 00:15:27,984 --> 00:15:37,560 ドイツ、イタリア、日本は侵略を続けるため 連盟から脱退した 188 00:15:38,116 --> 00:15:39,408 満州 189 00:15:40,872 --> 00:15:41,952 エチオピア 190 00:15:42,724 --> 00:15:44,904 そしてヒトラーはオーストリアに 191 00:15:45,268 --> 00:15:46,440 チェコスロバキアに 192 00:15:47,304 --> 00:15:52,560 そして1939年ポーランドに侵攻した ロシアへの第一の足がかりである 193 00:15:52,560 --> 00:15:55,056 しかしその試みは一旦中断された 194 00:15:56,184 --> 00:15:56,856 フランス、 195 00:15:57,480 --> 00:15:59,472 そして英国が宣戦したためである 196 00:16:00,048 --> 00:16:03,192 そのためドイツは西へと 進路を転ぜざるを得なかった 197 00:16:03,412 --> 00:16:08,688 我々の見てきた通り、1940年 西ヨーロッパ最後の敵対者を倒した 198 00:16:09,484 --> 00:16:14,136 そしてナチが英国を屈服させるのに 手間取っている間も 199 00:16:14,332 --> 00:16:19,104 ドイツの将軍たちは東方の電撃戦を 再開する計画を練っていた 200 00:16:19,468 --> 00:16:22,152 今やロシアへの道は開かれたのである 201 00:16:22,420 --> 00:16:25,728 しかしその攻撃の前には 準備の段階が必要であった 202 00:16:26,164 --> 00:16:33,144 ドイツの南東にはハンガリー、ルーマニア ブルガリア、ユーゴスラビア、ギリシャがある 203 00:16:33,220 --> 00:16:37,200 ハンガリーには穀物、 そして肥沃な大地がある 204 00:16:37,256 --> 00:16:42,312 食欲旺盛なドイツ兵から見れば それはハンガリー人には過ぎた贅沢だった 205 00:16:42,364 --> 00:16:46,488 ハンガリーはボーキサイトも産出する ボーキサイトはアルミの原料となり 206 00:16:46,488 --> 00:16:48,576 アルミは飛行機の材料となる 207 00:16:49,084 --> 00:16:53,376 そしてハンガリーには軍隊もあった ドイツ軍のような実戦経験はないが 208 00:16:53,376 --> 00:16:55,992 ロシアの砲火の前に投げ込むには十分だった 209 00:16:57,216 --> 00:16:59,808 ルーマニアは穀物のほか石油を産出する 210 00:17:00,384 --> 00:17:03,960 ヒトラーはその戦争マシーンを動かすため 一滴でも多くそれを欲した 211 00:17:04,608 --> 00:17:08,568 ルーマニアも多くの人口を有する より多くの奴隷労働力、 212 00:17:08,568 --> 00:17:10,782 ロシア攻撃での弾よけとして 必要であった 213 00:17:11,908 --> 00:17:16,944 何より大事なのは、ルーマニアもハンガリーも ロシアと国境を接しているということだ 214 00:17:16,944 --> 00:17:21,168 ヒトラーはドイツの将軍たちに委ねるため これらを欲していた 215 00:17:21,792 --> 00:17:26,280 ブルガリアはロシアとの国境を持たないが 基地は持っていた 216 00:17:26,692 --> 00:17:28,560 黒海への基地である 217 00:17:28,976 --> 00:17:33,312 ドイツの潜水艦の基地として ロシア艦と戦うのだ 218 00:17:33,800 --> 00:17:41,160 1941年春までにはハンガリー反動政権の 独裁者ホルティ提督も 219 00:17:41,640 --> 00:17:45,048 ルーマニアの若き王ミハイも 220 00:17:45,076 --> 00:17:49,944 (ヒトラーの傀儡たるアントネスク将軍の 手中の道具にすぎなかったが) 221 00:17:50,616 --> 00:17:56,784 常にドイツ帝国主義の信奉者であった ブルガリアのボリス国王も 222 00:17:57,624 --> 00:18:00,336 みなヒトラーに国を売り渡した 223 00:18:01,032 --> 00:18:07,200 いまは国民の反乱が脅威だが ヒトラーの軍隊に守ってもらい満足している 224 00:18:07,616 --> 00:18:16,896 1941年3月までにハンガリー、ルーマニア ブルガリアはドイツ軍の占領下に入った 225 00:18:16,896 --> 00:18:19,680 しかしユーゴスラビアと ギリシャがまだ残っている 226 00:18:19,680 --> 00:18:25,776 それらは未占領地域である限り 連合国の反攻ルートとなりうる 227 00:18:26,140 --> 00:18:31,608 定期的会談の中でヒトラーは ギリシャ占領を子分のムッソリーニに任せた 228 00:18:32,112 --> 00:18:33,936 この子分は歓喜した 229 00:18:34,344 --> 00:18:38,280 自分もまた親分に劣らぬ征服者であると 国民に分からせるチャンスと捉えたのだ 230 00:18:39,672 --> 00:18:41,496 しかし彼は間違っていた 231 00:18:41,496 --> 00:18:43,656 制服のせいだろうか? 232 00:18:45,456 --> 00:18:50,088 ともあれファシストの電撃戦神話は このギリシャ侵攻で一度潰えている 233 00:18:50,088 --> 00:18:57,288 ギリシャ軍は見事な山岳作戦を敢行 イタリア軍を押し戻しアルバニアへ攻め入った 234 00:18:57,556 --> 00:18:59,232 ヒトラーは激怒した 235 00:18:59,640 --> 00:19:04,440 ロシア攻撃の南側面を固める計画が 子分の失敗により遅れたのだ 236 00:19:04,440 --> 00:19:09,672 彼はユーゴスラビアとギリシャに 最後通牒を送った 237 00:19:09,672 --> 00:19:11,712 降伏するか、否かである 238 00:19:12,288 --> 00:19:16,248 しかしユーゴスラビアもギリシャも 兵士の長大な隊列を繰り出した 239 00:19:16,248 --> 00:19:19,176 ナチの奴隷役は魅力的でなかったようだ 240 00:19:35,184 --> 00:19:41,880 4月6日の明け方、ドイツは爆弾により ユーゴスラビアに宣戦布告した 241 00:19:42,292 --> 00:19:47,256 ナチとイタリアはあらゆる根拠地から 強力かつ連携のとれた攻撃を開始した 242 00:19:47,256 --> 00:19:52,968 支援の航空攻撃には対抗の余地もなく 最悪の結末は避けられなかった 243 00:19:53,424 --> 00:19:59,112 抗戦の意志は強固だったが 軍の戦力は細かく分断され捕えられた 244 00:19:59,112 --> 00:20:02,184 ギリシャでの戦いも4月6日に始まった 245 00:20:02,688 --> 00:20:08,592 ギリシャ軍、また来援のイギリス軍の 激しく勇敢な抵抗にもかかわらず 246 00:20:09,312 --> 00:20:13,368 兵力・装備両面で優れていた ドイツ軍に圧倒され 247 00:20:13,368 --> 00:20:20,352 ビストリツァ川、オリンポス山 名高いテルモピュライ街道を明け渡し 248 00:20:20,856 --> 00:20:25,128 4月の終わりには古都アテネに 鉤十字がひるがえっていた 249 00:20:26,572 --> 00:20:29,160 バルカン半島の征服がここに完了した 250 00:20:29,528 --> 00:20:34,056 ナチの戦力のすべてが ロシアに向け解き放たれる時が来たのだ 251 00:20:34,348 --> 00:20:36,456 もはや一刻も無駄にはできなかった 252 00:20:37,104 --> 00:20:38,952 しかし時間はロシアの武器であった 253 00:20:39,104 --> 00:20:46,128 最近我々のように 構築された平和的産業は 254 00:20:46,128 --> 00:20:47,880 戦争目的に転換された 255 00:20:47,912 --> 00:20:54,120 鋤や道具の生産に使われていた鉄鋼から 砲弾や火砲が生産された 256 00:20:54,600 --> 00:20:59,256 巨大な戦いの要求を満たすだけの生産が 不可能であることは承知していたが 257 00:20:59,760 --> 00:21:01,992 それでも可能な限りの生産をした 258 00:21:05,016 --> 00:21:07,392 同時に軍隊も拡大を始めた 259 00:21:07,780 --> 00:21:10,584 多くの人々が訓練のため召集され 260 00:21:10,660 --> 00:21:11,880 鍛え上げられ 261 00:21:12,168 --> 00:21:13,056 教練を繰り返し 262 00:21:13,512 --> 00:21:15,480 故郷の防衛に備えたのだ 263 00:21:24,368 --> 00:21:26,712 ナチはバルカン半島の征服を終え 264 00:21:26,712 --> 00:21:30,000 黒海からバルト海にわたる 前線を強固に固めていた 265 00:21:30,220 --> 00:21:35,264 ロシアも防衛線を築き ナチがどこから侵攻しても 266 00:21:35,514 --> 00:21:36,720 その力を削げるようにしていた 267 00:21:36,970 --> 00:21:38,352 では結局それはどこだったのだろうか? 268 00:21:40,032 --> 00:21:43,560 攻撃は5つの方向からやって来た 269 00:21:43,810 --> 00:21:46,512 北からももう一つ 270 00:21:47,140 --> 00:21:49,344 これが開戦の日である 271 00:21:52,348 --> 00:21:55,536 夜明けと共に 200近い枢軸軍の師団がなだれ込んだ 272 00:21:55,536 --> 00:21:57,316 200万を超える兵員数である 273 00:21:57,316 --> 00:22:00,456 戦線は3,200キロにも及び 274 00:22:00,456 --> 00:22:03,192 白海と黒海を結んでいた 275 00:22:03,192 --> 00:22:06,072 彼らの目標は赤軍の孤立化であり 276 00:22:06,072 --> 00:22:08,712 国境地帯が主戦場となった 277 00:22:17,188 --> 00:22:20,280 前線全域にわたって 防衛作戦が始まったが 278 00:22:20,280 --> 00:22:22,896 主に3つの主目標に集中された 279 00:22:22,928 --> 00:22:24,840 レニングラード、 280 00:22:24,840 --> 00:22:25,776 モスクワ、 281 00:22:25,776 --> 00:22:27,216 キエフ 282 00:22:27,216 --> 00:22:28,824 ウクライナの首都である 283 00:22:28,824 --> 00:22:34,176 最初の30日間でフォン・レープの部隊は レニングラードまで200キロに迫った 284 00:22:34,176 --> 00:22:38,112 マンネルハイムのフィンランドも ドイツ軍の支援の下 285 00:22:38,112 --> 00:22:40,920 北からこの街の包囲に向かった 286 00:22:41,400 --> 00:22:46,848 中央部ではフォン・ボックの軍が 770キロソ連領内に食い込んでいた 287 00:22:47,740 --> 00:22:51,312 ロシアの都市は次から次へと ドイツ軍に蹂躙された 288 00:22:51,312 --> 00:22:52,660 プスコフ 289 00:22:52,660 --> 00:22:55,532 ノヴゴロド 290 00:22:55,532 --> 00:22:57,508 ブレスト=リトフスク 291 00:22:57,508 --> 00:23:00,028 ミンスク 292 00:23:00,028 --> 00:23:02,376 モギリョフ 293 00:23:02,376 --> 00:23:04,992 ヴィテブスク 294 00:23:05,380 --> 00:23:08,736 7月17日、最初の主目標が占領された 295 00:23:08,736 --> 00:23:12,504 スモレンスク モスクワへの要石と見なされた都市である 296 00:23:12,700 --> 00:23:18,168 同時に南ではフォン・ルントシュテットの 部隊がウクライナに深く侵入 297 00:23:18,416 --> 00:23:20,808 しかしこれが電撃戦の限界であった 298 00:23:21,224 --> 00:23:24,168 世界はロシアに更なる6週間を与えた 299 00:23:24,168 --> 00:23:27,408 ナチは声明を発表 300 00:23:27,560 --> 00:23:30,336 『東方における問題は すでに解決された 301 00:23:30,336 --> 00:23:32,904 スモレンスクはモスクワへの途上で 最後の小休止である』 302 00:23:32,904 --> 00:23:33,648 -ドイツ軍最高司令部 303 00:23:33,824 --> 00:23:36,292 しかしここで奇妙な事が起こった 304 00:23:36,292 --> 00:23:41,160 強力なるドイツ軍は その電撃戦を開始して以来 305 00:23:41,160 --> 00:23:45,360 ヨーロッパの諸国を 次々と降伏させてきたが 306 00:23:45,360 --> 00:23:48,480 このドイツ軍の力の前に屈しない国家に 307 00:23:49,756 --> 00:23:51,792 ついに出くわしたのである 308 00:23:51,792 --> 00:23:56,568 ヒトラーの軍隊がソ連領内に 深く、より深く食い込んだにもかかわらず、 309 00:23:56,568 --> 00:24:01,320 10月15日までにはクレムリンの落とす 影の中にまで入り込んだにもかかわらず、 310 00:24:01,320 --> 00:24:05,160 ソヴィエト政権や 全ての外交使節に対し 311 00:24:05,160 --> 00:24:08,760 東に1,100キロのクイビシェフまでの 疎開を強いたにもかかわらず、 312 00:24:08,760 --> 00:24:11,544 ヒトラーの勝利宣言にもかかわらず: 313 00:24:11,544 --> 00:24:15,792 『もはやこの敵は壊滅し 復活はありえないといえる』 314 00:24:16,540 --> 00:24:21,624 12月までにロシアが 130万平方キロという 315 00:24:21,624 --> 00:24:25,536 アメリカ中西部全域にも等しい 広大な領土を 316 00:24:25,536 --> 00:24:27,768 侵略者に明け渡したにも かかわらずである 317 00:24:28,272 --> 00:24:36,360 確かにロシアは最高の農業地帯、 最もよく開発された工場群、 318 00:24:36,604 --> 00:24:41,006 何百万もの人口、 何千もの戦車や航空機を失った 319 00:24:41,524 --> 00:24:43,032 これらすべてにもかかわらず、である 320 00:24:43,032 --> 00:24:46,782 この6週間は6ヶ月に延長された 321 00:24:46,516 --> 00:24:49,872 そして恐るべきナチの電撃戦は鈍り、 322 00:24:49,872 --> 00:24:51,624 つまづき、 323 00:24:51,624 --> 00:24:53,448 ついには死んでしまった 324 00:24:53,448 --> 00:24:57,624 何が起こったのだろうか? 分析してみよう 325 00:24:58,776 --> 00:25:02,136 第一に、この巨大な戦いは 単に2つの軍隊の衝突ではない 326 00:25:02,188 --> 00:25:07,080 2つの戦闘手法、2つの戦略もまた 相対峙したのである 327 00:25:07,444 --> 00:25:11,328 ドイツの戦略は実績ある "Keil und Kessel"機動を基にしたものだ 328 00:25:11,328 --> 00:25:13,440 「くさびと罠」のことだ 329 00:25:14,184 --> 00:25:17,190 一本のくさびが敵の領域に 深く打ち込まれる 330 00:25:17,190 --> 00:25:20,304 もう一本が同様に打ち込まれ 会合する 331 00:25:20,304 --> 00:25:22,872 こうして罠がつくられる 332 00:25:22,872 --> 00:25:25,704 敵は包囲され孤立する 333 00:25:25,704 --> 00:25:31,488 これまでドイツ軍はどの作戦でも 侵攻の最初で決定的な戦いを挑んでいた 334 00:25:32,160 --> 00:25:35,856 『敵は一撃で撃破せねばならない 損害を惜しむことなく 335 00:25:35,856 --> 00:25:38,592 巨大なる、全てを破壊し尽くす 一撃を与えるのである』 336 00:25:38,592 --> 00:25:39,792 -アドルフ・ヒトラー 337 00:25:40,464 --> 00:25:43,776 ここまでに示した作戦を 振り返ってみよう 338 00:25:44,026 --> 00:25:44,952 ポーランド 339 00:25:44,952 --> 00:25:47,688 ポーランド軍は国境に兵力を集中させた 340 00:25:48,072 --> 00:25:49,920 電撃戦により突破された 341 00:25:49,512 --> 00:25:51,936 18日でポーランドは消滅した 342 00:25:52,704 --> 00:25:53,760 フランス 343 00:25:54,120 --> 00:25:56,400 連合軍は国境の守りを強化した 344 00:25:56,400 --> 00:25:58,104 セダンで突破された 345 00:25:58,104 --> 00:26:00,504 フランスの問題も解決された 346 00:26:00,984 --> 00:26:02,280 バルカン半島 347 00:26:02,280 --> 00:26:04,872 ユーゴスラビア軍は国境へと急いだ 348 00:26:04,872 --> 00:26:06,432 突破された 349 00:26:06,432 --> 00:26:09,552 12日でユーゴスラビアも敗北した 350 00:26:09,552 --> 00:26:12,744 ドイツ軍は同じ電撃戦を ロシアに対しても計画した 351 00:26:13,252 --> 00:26:16,248 だがロシア軍は独自の戦略を開発していた 352 00:26:16,248 --> 00:26:19,872 彼らの広大なる国土を 最大限活用しようとしたのだ 353 00:26:20,304 --> 00:26:23,112 ロシアの戦略は縦深防御だ 354 00:26:23,112 --> 00:26:26,760 何重もの防衛線が 後方奥深くまで築かれていた 355 00:26:27,192 --> 00:26:31,776 ナチのくさびが打たれた時 第一の線は変形し 356 00:26:31,776 --> 00:26:34,260 第二の線に合流する 357 00:26:34,752 --> 00:26:39,072 再びくさびが打たれる 今度も防衛線の一部は失われるが 358 00:26:39,072 --> 00:26:43,848 変形し第三の線に合流する 359 00:26:44,352 --> 00:26:48,096 かくして、ドイツ軍がロシアの国土に 深く侵入すればするほど 360 00:26:48,096 --> 00:26:50,952 反撃は厳しくなったのである 361 00:26:50,952 --> 00:26:53,928 終いには不落の壁が立ちふさがり 362 00:26:54,696 --> 00:26:58,662 「全てを破壊し尽くす一撃」を与える機会は 失われてしまったのである 363 00:26:59,552 --> 00:27:01,296 結果として 364 00:27:01,296 --> 00:27:04,344 ドイツは土地は手にしたが 作戦には失敗したのだ 365 00:27:04,656 --> 00:27:08,568 反面ロシアはその戦術により 軍の主力を失わずに済んだ 366 00:27:08,568 --> 00:27:13,536 ドイツの目論見に反し 長期戦が避けられなくなったのだ 367 00:27:14,284 --> 00:27:17,688 ロシアがドイツを破った戦術は もう一つある 368 00:27:18,388 --> 00:27:21,144 ドイツ軍は電撃戦を開発した 369 00:27:21,144 --> 00:27:24,696 機械化された戦い、 車輪に乗った軍隊、 370 00:27:25,224 --> 00:27:27,840 立ちはだかるものを全て打ち砕く ジャガーノートである 371 00:27:30,216 --> 00:27:33,864 だがロシア軍は彼らをこの移動要塞から 引きずり下ろす方法を発見した 372 00:27:33,864 --> 00:27:36,288 彼らは都市を抵抗拠点としたのだ 373 00:27:36,264 --> 00:27:39,192 電撃戦を止めさせ 街路で戦わせるのだ 374 00:27:46,520 --> 00:27:52,080 都市が爆撃されればされるほど ドイツ戦車の進撃は困難になった 375 00:27:52,824 --> 00:27:58,800 これらのロシアの都市の名前は 今や隣国の町の名前のように身近だ: 376 00:27:59,308 --> 00:28:00,264 ロストフ 377 00:28:00,504 --> 00:28:01,296 ハリコフ 378 00:28:01,848 --> 00:28:02,640 キエフ 379 00:28:02,956 --> 00:28:03,936 クルスク 380 00:28:04,392 --> 00:28:05,640 スモレンスク 381 00:28:05,620 --> 00:28:09,408 ナチスの電撃戦が 次々と矛先を向けた街々 382 00:28:10,156 --> 00:28:14,640 赤軍はこれらの街を 重要な戦略拠点としたのだ 383 00:28:15,600 --> 00:28:16,800 オデッサ 384 00:28:17,044 --> 00:28:19,968 包囲に対して2ヶ月以上に渡り 英雄的に抗戦した 385 00:28:21,388 --> 00:28:24,576 クリミアへと突進するナチを 食い止めた 386 00:28:25,512 --> 00:28:26,832 セヴァストポリ 387 00:28:26,832 --> 00:28:30,120 ドイツ軍が攻略のため用いたあらゆる手段に 徹底的に対抗した 388 00:28:33,460 --> 00:28:38,256 この街のためのロシア軍の戦いは 8ヶ月半にも及んだ 389 00:28:38,496 --> 00:28:44,400 黒海の大海軍基地を明け渡すまいと 1インチを争った 390 00:28:45,100 --> 00:28:51,072 ドイツ軍が市街に突入すると あらゆる街区、あらゆる街路が守られていた 391 00:28:55,372 --> 00:28:57,432 街路上では建物一つ一つを 392 00:29:07,804 --> 00:29:10,488 建物内では部屋一つ一つを争った 393 00:29:19,152 --> 00:29:21,768 彼らの都市が破壊されることは ロシア人も分かっていた 394 00:29:22,018 --> 00:29:24,840 しかし彼らの目的は 都市を守る事ではない 395 00:29:24,840 --> 00:29:27,312 ドイツ軍の撃破である 396 00:29:27,864 --> 00:29:31,056 『我が闘争』一冊に払う代償としては あまりに大きい 397 00:29:31,728 --> 00:29:34,800 こうしてドイツ兵は 装甲の中から引きずり出され 398 00:29:34,800 --> 00:29:40,804 もはや無いと思っていた近接戦を 死ぬまで戦わされた 399 00:29:40,804 --> 00:29:43,608 もう一つ、ドイツ軍が 見過ごしていたものがある 400 00:29:43,608 --> 00:29:45,552 それは国民である 401 00:29:46,296 --> 00:29:51,168 戦闘に勝つのは将軍だが 戦争に勝つのは国民である 402 00:29:52,180 --> 00:29:54,888 運命の6月22日 403 00:29:55,272 --> 00:29:58,800 ロシア国民は 祖国に対する侵略を知らされた 404 00:29:59,544 --> 00:30:02,568 険しい表情に 彼らの決意が表れている 405 00:30:03,048 --> 00:30:05,232 死ぬまで戦う、 406 00:30:05,232 --> 00:30:07,728 決して降伏すまい、と 407 00:30:07,948 --> 00:30:12,216 彼らにとってこれは 誰が、どこを占領したかという問題ではない 408 00:30:12,460 --> 00:30:15,840 生か、死かの問題である 409 00:30:18,120 --> 00:30:20,808 『この戦争は単なる戦争ではない 410 00:30:20,808 --> 00:30:23,880 ロシア人全ての戦争である 411 00:30:23,880 --> 00:30:27,480 我らの眼前に迫った危機を 取り除くだけでなく 412 00:30:27,480 --> 00:30:31,416 ファシズムのくびきにあえぐ 全ての人を救うのである』 413 00:30:32,352 --> 00:30:35,568 工場に、農場に 呼びかけがなされ 414 00:30:36,172 --> 00:30:40,944 あやゆるロシアの村から、街から 人々がそれに応えた 415 00:30:43,392 --> 00:30:46,464 今や関心事はただ一つとなった 416 00:30:47,140 --> 00:30:48,624 勝利である 417 00:30:48,624 --> 00:30:51,120 総力戦は総動員を意味する 418 00:30:51,120 --> 00:30:53,160 兵士だけの戦いではない 419 00:30:54,072 --> 00:30:55,488 全国民の戦いである 420 00:30:56,112 --> 00:31:00,432 老若男女は問わない 421 00:31:00,816 --> 00:31:02,856 年齢など関係ない 422 00:31:02,856 --> 00:31:07,392 君が12才の子供であれば 12才なりの仕事がある 423 00:31:08,352 --> 00:31:10,368 性別など関係ない 424 00:31:10,368 --> 00:31:13,704 ライフルを扱えれば 君も兵士である 425 00:31:14,232 --> 00:31:16,728 旋盤を回せれば 君も兵士である 426 00:31:16,848 --> 00:31:19,680 畑を耕せれば 君も兵士である 427 00:31:19,680 --> 00:31:24,864 機関車を、船を、あるいはトラクターを 運転できれば 428 00:31:24,864 --> 00:31:26,952 君もまた兵士である 429 00:31:27,388 --> 00:31:30,840 君のするあらゆる仕事が 総力戦の一部となるのだから 430 00:31:31,464 --> 00:31:34,344 敵が使いうるものは 何一つ残してはならない 431 00:31:34,728 --> 00:31:37,632 1ヤードの電線、1ポンドの鉄 432 00:31:38,092 --> 00:31:40,656 1エーカーの畑、1頭の牛たりとも 433 00:31:41,544 --> 00:31:48,144 この老人は草原を見張っている 敵の姿が見えたらすぐに火を放つためだ 434 00:31:49,444 --> 00:31:51,120 焦土作戦 435 00:31:51,460 --> 00:31:55,176 疎開できないあらゆるものは 破壊する 436 00:31:55,396 --> 00:31:56,904 工場を、 437 00:31:56,976 --> 00:31:58,056 作物を、 438 00:31:58,320 --> 00:31:59,688 石油備蓄所を、 439 00:31:59,812 --> 00:32:01,992 炎が全てを包み込む 440 00:32:02,644 --> 00:32:04,992 ドニエプル川の巨大なダム 441 00:32:04,992 --> 00:32:08,400 鉄とコンクリートのみならず 442 00:32:08,400 --> 00:32:12,150 5年に渡るロシアの労働 ロシアの汗の結晶であった 443 00:32:12,720 --> 00:32:16,944 ウクライナの農場に、人々に 電化の驚異をもたらしてきたが 444 00:32:17,280 --> 00:32:21,552 今や生み出される巨大な電力を 敵に明け渡す事はできず 445 00:32:21,672 --> 00:32:22,800 破壊された 446 00:32:26,328 --> 00:32:27,744 焦土作戦 447 00:32:27,744 --> 00:32:30,552 人々が住み、働いてきた土地が 448 00:32:31,032 --> 00:32:32,160 森が、 449 00:32:32,280 --> 00:32:33,456 草原が、 450 00:32:33,480 --> 00:32:34,848 畑が、 451 00:32:35,098 --> 00:32:39,840 炎に明け渡されようとも 侵略者の手には渡さない 452 00:32:40,344 --> 00:32:43,080 これが焦土作戦である 453 00:32:45,912 --> 00:32:49,752 ドイツ軍後方での活動のために 新たな軍が組織された 454 00:32:49,824 --> 00:32:51,696 制服はなく 455 00:32:51,936 --> 00:32:54,000 森林を家とし 456 00:32:54,388 --> 00:32:56,808 敵後方を戦線とする 457 00:32:57,696 --> 00:32:58,944 ゲリラ軍である 458 00:32:59,620 --> 00:33:04,320 栄誉は最小だが 戦意は最大である 459 00:33:04,948 --> 00:33:07,536 彼らの戦績は滅多に記録されない 460 00:33:08,016 --> 00:33:13,704 この顔をよく見ておけ 捕虜としてその顔を見ることもなければ 461 00:33:13,704 --> 00:33:16,488 戦死者墓地で その名を読むこともないだろう 462 00:33:17,376 --> 00:33:20,760 何の支援も望むことはできない 463 00:33:20,908 --> 00:33:23,880 それでも後方に潜み戦闘を続ける 464 00:33:24,340 --> 00:33:27,336 彼らの唯一の目標は仮借無き破壊である 465 00:33:27,720 --> 00:33:29,952 電話線の、 466 00:33:29,976 --> 00:33:31,296 補給路の、 467 00:33:31,612 --> 00:33:33,408 そして侵略者そのもののである 468 00:33:35,448 --> 00:33:37,176 彼らの武器はダイナマイト、 469 00:33:37,276 --> 00:33:39,192 そして補給線への恐怖である 470 00:33:44,020 --> 00:33:46,992 彼らに慈悲は与えられず また彼らもそれを求めない 471 00:33:53,064 --> 00:33:55,224 これがゲリラ軍である 472 00:33:55,656 --> 00:33:57,288 これが焦土作戦である 473 00:33:57,844 --> 00:33:59,520 これが赤軍である 474 00:33:59,956 --> 00:34:01,776 これがその指導者たちである 475 00:34:02,832 --> 00:34:07,396 これがドイツ軍の得た土地が 476 00:34:07,396 --> 00:34:10,300 実に130万平方キロという その広大さにもかかわらず 477 00:34:10,300 --> 00:34:14,952 何ももたらさない不毛の 焦土にすぎなかった理由である 478 00:34:15,624 --> 00:34:19,944 これがドイツ軍が 5ヶ月半に及ぶ電撃戦の末 479 00:34:19,944 --> 00:34:23,160 その目標の目と鼻の先に達しながら 480 00:34:23,160 --> 00:34:26,976 モスクワへの入り口で 進撃を停止させられた理由である 481 00:34:26,976 --> 00:34:32,544 これが『12月までにはクレムリンの尖塔に 鉤十字の旗が翻るであろう』という 482 00:34:32,544 --> 00:34:34,348 ヒトラーの予告にもかかわらず 483 00:34:35,376 --> 00:34:40,680 12月に入ってもロシアの首都に 一向に鉤十字が現れなかった理由である 484 00:34:41,146 --> 00:34:45,672 古都モスクワでは ナチの征服者の入城行進の代わりに 485 00:34:45,672 --> 00:34:48,816 新手の赤軍補充兵が 行進を続けていた 486 00:34:51,576 --> 00:34:56,136 これが1941年12月までの ドイツ軍による侵攻の結果であった 487 00:34:56,136 --> 00:34:59,724 次の映画 『ロシアの戦い』後編では 488 00:34:59,724 --> 00:35:08,880 ロシア人がドイツ軍の猛攻から いかにして身を守ったか、そして 489 00:35:08,880 --> 00:35:16,712 決意の下団結した自由国民に対しては 無敵の軍など無いということを 490 00:35:16,712 --> 00:35:20,958 彼らがいかにして証明したかが 示されるだろう 491 00:35:38,352 --> 00:35:46,608 『なぜ我々は戦うのか』 7本の情報映画シリーズ 492 00:35:46,608 --> 00:35:54,792 第5回『ロシアの戦い』後編 493 00:36:08,044 --> 00:36:13,296 『ロシアの戦い』前編では ロシア国民が幾世紀にもわたって 494 00:36:13,296 --> 00:36:16,176 侵略者から祖国を守り抜いてきた 歴史を示した 495 00:36:21,512 --> 00:36:25,320 また5ヶ月半の電撃戦の 顛末も示した 496 00:36:27,988 --> 00:36:31,300 ロシアはヒトラーの軍を モスクワへの入り口で食い止めた 497 00:36:31,300 --> 00:36:35,832 1941年12月までには クレムリンに鉤十字の旗が翻るという 498 00:36:35,832 --> 00:36:38,568 ヒトラーの予告に反して 499 00:36:39,124 --> 00:36:44,232 12月になってもロシアの首都には 変わらぬソ連国旗があった 500 00:36:44,232 --> 00:36:48,480 古都の街路を行進するのも ドイツの征服者たちではなく 501 00:36:48,796 --> 00:36:54,576 増援、あるいは交代として前線に向かう 赤軍の補充兵たちであった 502 00:37:01,368 --> 00:37:05,096 『我らが偉大なる父祖たちの勇敢さを この戦いの模範としよう』 503 00:37:05,096 --> 00:37:07,096 -J.スターリン 504 00:37:07,096 --> 00:37:10,224 ロシア人はこのスローガンを読み その意味するところを理解した 505 00:37:10,968 --> 00:37:17,184 反撃に転ずる時が必ず訪れると 過去の歴史が示しているのである 506 00:37:18,676 --> 00:37:20,448 果たしてその時は来た 507 00:37:21,148 --> 00:37:24,984 古からの盟友、ロシアの冬が ロシアの大地を覆ったのだ 508 00:37:34,872 --> 00:37:40,488 ロシアの教会では信徒たちが 侵略者への勝利を祈った 509 00:37:46,948 --> 00:37:51,648 おお慈悲深き主よ 我らの努力に勝利で報いたまえ 510 00:37:51,648 --> 00:37:55,648 そして闇に打ち克つ光の力を、 野蛮なる悪の力に打ち克つ正義の力を、 511 00:37:55,648 --> 00:37:59,648 ファシストの鉤十字に打ち克つ キリストの十字の力をもたらす 512 00:37:59,648 --> 00:38:03,148 篤き信仰を我らに授けたまえ アーメン 513 00:38:03,148 --> 00:38:06,648 -モスクワ総主教 セルギイ 1941年11月21日、モスクワ 514 00:38:07,752 --> 00:38:12,648 前線では赤軍兵士が 待望の命令を聞いた - 515 00:38:12,898 --> 00:38:17,040 『ドイツ軍を撃破する諸君に 全世界が注目している 516 00:38:17,760 --> 00:38:22,368 今諸君が戦っているのは 解放のための戦争、正義の戦争である 517 00:38:23,012 --> 00:38:25,320 ドイツの侵略者に死を!』 518 00:38:28,060 --> 00:38:29,568 戦闘機部隊準備よし 519 00:38:30,748 --> 00:38:32,424 爆撃機部隊準備よし 520 00:38:33,172 --> 00:38:34,800 空挺部隊準備よし 521 00:38:35,620 --> 00:38:37,584 砲兵部隊位置についた 522 00:38:38,236 --> 00:38:39,552 戦車搭乗完了 523 00:38:40,920 --> 00:38:42,624 騎兵部隊位置についた 524 00:38:43,800 --> 00:38:45,048 歩兵部隊準備よし 525 00:38:48,752 --> 00:38:51,168 丘の向こうは敵の土地だ 526 00:38:51,576 --> 00:38:52,272 撃て! 527 00:38:53,044 --> 00:38:53,832 撃て! 528 00:38:54,624 --> 00:38:55,464 撃て! 529 00:38:56,160 --> 00:38:56,928 撃て! 530 00:38:57,408 --> 00:38:58,056 撃て! 531 00:40:24,512 --> 00:40:27,696 今や死ぬまで戦わされるのは ドイツ軍の側となった 532 00:40:36,604 --> 00:40:40,368 ドイツ軍にとって初めての撤退である 533 00:40:45,672 --> 00:40:49,272 今度はドイツ軍が 機銃掃射の恐怖を知る番である 534 00:41:21,196 --> 00:41:24,192 何日も、何週も 侵略者のくびきに苦しんできた 535 00:41:24,192 --> 00:41:28,152 村々が、町々が次々と 536 00:41:28,152 --> 00:41:30,216 赤軍に解放された 537 00:41:32,784 --> 00:41:35,208 ヴォロコラムスク 538 00:41:44,376 --> 00:41:46,560 エピファニ 539 00:41:51,312 --> 00:41:53,808 タルーサ 540 00:41:58,440 --> 00:42:01,320 ヤースナヤ・ポリャーナ 541 00:42:07,132 --> 00:42:09,408 ヴェニョフ 542 00:42:29,424 --> 00:42:31,680 ロガチョフ 543 00:42:44,548 --> 00:42:46,560 クリン 544 00:42:49,780 --> 00:42:52,128 モジャイスク 545 00:42:54,072 --> 00:42:56,304 ボロディノ 546 00:42:58,464 --> 00:43:00,672 カルーガ 547 00:43:02,260 --> 00:43:08,568 地下室から、森から、 あるいは彼らのみが知る秘密の場所から 548 00:43:08,568 --> 00:43:14,448 男性が、女性が、子供たちが わが家の待つ町へと戻っていった 549 00:43:14,448 --> 00:43:18,288 兵士やゲリラがその妻や母を見つけた 550 00:43:19,968 --> 00:43:21,648 友人たちが再会した 551 00:43:22,180 --> 00:43:24,312 街頭集会で感謝が表現された 552 00:43:24,916 --> 00:43:30,456 しかし彼らの胸には感謝だけではなく 決して忘れ得ぬ物も残った 553 00:43:30,888 --> 00:43:32,328 荒れ果てた家々 554 00:43:32,956 --> 00:43:37,248 かつて繁栄し、発展を続けていた町は 破壊し尽くされ 555 00:43:38,956 --> 00:43:43,920 今は生気のない廃墟として 力なく立っていた 556 00:43:43,920 --> 00:43:45,912 何の容赦も与えられなかったのだ 557 00:43:53,260 --> 00:43:57,576 かつてチャイコフスキーが住んだこの家は 記念館とされていた 558 00:43:57,076 --> 00:43:59,592 この作曲家はロシアに音楽を捧げ 559 00:43:59,932 --> 00:44:03,000 ロシア国民の心を 音楽により追求してきた 560 00:44:03,250 --> 00:44:07,248 その音楽はロシア人の心を捉え やがて全世界の人々を魅了したのである 561 00:44:08,236 --> 00:44:09,936 例えばピアノ協奏曲 562 00:44:18,676 --> 00:44:19,992 交響曲第5番 563 00:44:29,596 --> 00:44:30,960 交響曲第6番 564 00:44:40,736 --> 00:44:47,232 その作品は無数の人々に感動を与えてきた これからも常に与えつづけるだろう 565 00:44:47,284 --> 00:44:52,344 しかしナチからは 蛮性を引き出しただけであった 566 00:44:57,960 --> 00:45:00,508 この建物はトルストイの住居であった 567 00:45:00,508 --> 00:45:04,128 不朽の小説『戦争と平和』の作者である 568 00:45:04,896 --> 00:45:08,856 ここも記念館となっていたが それもドイツ軍が来るまでのことであった 569 00:45:12,076 --> 00:45:14,112 これはトルストイの墓である 570 00:45:14,904 --> 00:45:18,216 隣に埋められたナチ共も 『戦争と平和』を読んでいれば 571 00:45:18,216 --> 00:45:20,376 自らを待ち受ける運命を 予見できたことだろう 572 00:45:21,432 --> 00:45:24,120 しかし、ナチが埋めなかった死者もいる 573 00:45:24,628 --> 00:45:25,848 ロシア人の死者である 574 00:45:27,676 --> 00:45:30,672 彼らは兵士でもなければ 戦いに巻き込まれたのでもない 575 00:46:21,148 --> 00:46:24,912 これは人形ではない 子供たちだ 576 00:46:25,852 --> 00:46:28,944 上級司令部の命令で 大量虐殺が行われたのだ 577 00:46:29,452 --> 00:46:33,240 犠牲となった子供は他にもいる 生き残ったことは幸運だったのだろうか 578 00:46:33,240 --> 00:46:34,800 それとも不幸だったのだろうか 579 00:46:35,332 --> 00:46:37,896 この少女たちは もはや少女ではなくなった 580 00:46:38,596 --> 00:46:42,312 ナチの兵士たちの目を引いたがために そうされたのだ 581 00:46:44,356 --> 00:46:47,616 そして侵略者に抵抗した者には このような結末が待っていた 582 00:46:50,280 --> 00:46:53,400 これはロシア人にとって 永久に忘れ得ぬ出来事である 583 00:46:58,036 --> 00:47:01,344 これはロシア人が 永久に忘れない出来事である 584 00:47:03,320 --> 00:47:08,904 これが故にロシア人は 命にかけてこの聖なる誓いを立てた: 585 00:47:09,840 --> 00:47:13,684 『焼かれた街に、村に報いるため 586 00:47:13,684 --> 00:47:21,864 我らの子の、そして母の死に報いるため 587 00:47:21,864 --> 00:47:30,624 我ら人民に対する暴虐と 侮辱に報いるため 588 00:47:30,624 --> 00:47:34,056 私は敵への復讐を誓う 589 00:47:34,056 --> 00:47:40,704 自らが、自らの家族が、全人民が 邪悪なるファシストに降るのならば 590 00:47:40,704 --> 00:47:47,448 私はそれよりも先に 敵との激しき戦いの中で 591 00:47:47,448 --> 00:47:50,976 死を選ぶことを誓う 592 00:47:51,048 --> 00:47:54,504 血には血を! 593 00:47:54,504 --> 00:47:58,254 死には死を!』 594 00:48:13,488 --> 00:48:16,128 これがロシア軍快進撃の理由である 595 00:48:16,128 --> 00:48:21,072 ロストフからレニングラードまでの 全戦線にわたって 596 00:48:21,072 --> 00:48:24,720 止めることのできないロシア軍の奔流が 深く侵食していった 597 00:48:24,720 --> 00:48:29,856 1942年春までには これだけの地域がドイツから解放された 598 00:48:30,508 --> 00:48:33,624 だが奪回されたのがこの町か、 あの村かといったことは 599 00:48:33,624 --> 00:48:36,744 さして重要ではない 600 00:48:36,744 --> 00:48:41,112 重要なのは、ナチの不敗神話が ついに潰えたということである 601 00:48:41,112 --> 00:48:46,464 ドイツ軍も撤退させることができる ドイツ軍も負かすことができる 602 00:48:46,464 --> 00:48:48,960 ドイツ兵も捕虜とすることができる 603 00:48:48,960 --> 00:48:56,448 『昨年ヨーロッパ戦線でみられた最大の進展は ロシアの軍による大攻勢である』 604 00:48:56,448 --> 00:49:01,128 -フランクリン・ルーズベルト大統領 1942年4月29日 605 00:49:02,788 --> 00:49:08,544 だが、ナチの不敗神話を破ったのは この大攻勢だけではない 606 00:49:09,120 --> 00:49:13,464 この大戦の歴史の中に 永遠に生き続けるであろうもう一つの功績が 607 00:49:13,464 --> 00:49:16,056 この街の市民たちによって 成し遂げられた 608 00:49:17,088 --> 00:49:19,440 この街はロシア革命の指導者 レーニンの名をとって 609 00:49:19,440 --> 00:49:21,864 現在レニングラードと呼ばれている 610 00:49:22,512 --> 00:49:25,824 以前はペトログラードと呼ばれていた 611 00:49:25,824 --> 00:49:28,488 街の建設者ピョートル大帝を 記念した名前である 612 00:49:28,660 --> 00:49:32,016 現在この街はモスクワに次ぎ 613 00:49:32,016 --> 00:49:34,920 ソビエト連邦にとって 二番目に重要な中核都市である 614 00:49:35,208 --> 00:49:38,664 ロシアの最重要産業のいくつかの 拠点であり 615 00:49:38,664 --> 00:49:42,624 また、バルト海における ロシアの一大海港であり 616 00:49:42,970 --> 00:49:45,024 バルト海艦隊の拠点である 617 00:49:45,696 --> 00:49:47,976 ソ連の他の地域同様この街にも 618 00:49:48,408 --> 00:49:51,504 6月22日攻撃が加えられた 619 00:49:51,700 --> 00:49:55,512 しかしこの街はドイツとの境界から 数マイルしか離れていなかったのだ 620 00:49:59,616 --> 00:50:03,984 赤軍兵士やバルト海艦隊の水兵たちが 敵を迎え撃つため街を離れた一方 621 00:50:04,180 --> 00:50:06,792 後方ではもう一つの軍が組織されていた 622 00:50:06,792 --> 00:50:10,368 小銃ではなく シャベルを武器とする軍である 623 00:50:10,900 --> 00:50:12,120 男たちが、 624 00:50:12,768 --> 00:50:14,184 女たちが、 625 00:50:14,928 --> 00:50:16,344 子供たちが、 626 00:50:17,208 --> 00:50:19,560 熱心に塹壕を掘り 627 00:50:19,900 --> 00:50:21,624 バリケードを築き 628 00:50:22,272 --> 00:50:23,544 防衛線を構築し 629 00:50:24,600 --> 00:50:26,352 一致団結した 630 00:50:26,976 --> 00:50:29,712 自分たちも前線にいるということを 彼らは理解していた 631 00:50:30,264 --> 00:50:31,680 果たしてその通りとなった 632 00:51:37,952 --> 00:51:41,640 夜が来てもレニングラードの砲火が 止むことはなかった 633 00:52:34,944 --> 00:52:36,744 そして朝が来た 634 00:52:36,744 --> 00:52:40,872 レニングラード市民は瓦礫を掘って 同胞たちを探した 635 00:53:03,464 --> 00:53:09,408 彼らの状況はロンドン、ロッテルダム、 ワルシャワ市民に似ていた 636 00:53:09,408 --> 00:53:16,056 この街でも住宅や博物館など 「重要な軍事目標」が瓦礫と化していた 637 00:53:16,728 --> 00:53:19,728 レニングラード動物園の ロシア版ダンボもである 638 00:53:20,184 --> 00:53:22,368 しかしこの街の場合 一つ重要な違いがあった 639 00:53:23,016 --> 00:53:25,848 空からの爆撃は レニングラード市民が直面する脅威の 640 00:53:25,848 --> 00:53:28,608 小さな一部分にすぎなかったのである 641 00:53:29,136 --> 00:53:34,296 9月にはナチがこの街を包囲し 孤立とその先の運命を突きつけた 642 00:53:34,588 --> 00:53:38,544 ドイツ軍指揮官は市に最後通告を送り 降伏を迫った 643 00:53:39,076 --> 00:53:41,232 しかし返事は未だにない 644 00:53:43,512 --> 00:53:46,176 包囲下のレニングラードに 再び夕闇が迫る 645 00:53:46,176 --> 00:53:49,368 包囲はすでに17ヶ月にも及ぶ 646 00:53:50,000 --> 00:53:54,624 ロシアの他の地方同様、レニングラードでも この年の冬の到来は早かった 647 00:53:55,248 --> 00:53:57,192 寒く、厳しい冬である 648 00:53:57,192 --> 00:53:59,016 ここ数年で最も厳しい 649 00:53:59,212 --> 00:54:05,016 しかし他の地方と異なりこの都市では 冬は味方ではなく敵であった 650 00:54:05,640 --> 00:54:08,784 氷点下10度、20度、30度と下がる気温は 651 00:54:08,784 --> 00:54:11,904 ここではさらなる困難、 さらなる苦痛を意味していた 652 00:54:12,604 --> 00:54:17,040 市外の塹壕は 氷雪と化していたが 653 00:54:17,040 --> 00:54:19,608 中では守備隊が力強く任務についていた 654 00:54:20,088 --> 00:54:24,408 一歩たりとも退かず 必要とあらば死ぬ覚悟である 655 00:54:24,744 --> 00:54:29,880 敵は多大な努力にもかかわらず 街の入り口で足止めされていた 656 00:54:30,312 --> 00:54:32,808 しかし今や街は病、 657 00:54:33,192 --> 00:54:34,056 飢え、 658 00:54:35,184 --> 00:54:36,432 欠乏に直面していた 659 00:54:39,408 --> 00:54:41,352 燃料の石油は無く 660 00:54:42,028 --> 00:54:44,328 送電線には電気が流れず 661 00:54:44,328 --> 00:54:50,688 人々は旋盤や作業台のもとへの 数マイルを歩かねばならない 662 00:54:53,524 --> 00:54:56,472 管が凍結し水道が止まれば 663 00:54:56,472 --> 00:55:00,648 道に穴を掘って水を得る 664 00:55:08,136 --> 00:55:09,504 食料も無い 665 00:55:09,504 --> 00:55:12,672 都市全体が飢餓に直面した 666 00:55:13,416 --> 00:55:16,536 配給されるパンも 工場労働者は1日250グラム、 667 00:55:16,536 --> 00:55:21,288 その他は大人、子供にかかわらず 125グラムにすぎない 668 00:55:22,368 --> 00:55:26,664 そして街路から忍び寄る 伝染病という敵を食い止めるため 669 00:55:26,664 --> 00:55:29,784 婦人の軍団がシャベルで、 670 00:55:30,340 --> 00:55:34,320 またつるはしで 日々街路を片付け 671 00:55:34,924 --> 00:55:40,344 汚染の源となる瓦礫を 取り除いた 672 00:55:42,388 --> 00:55:46,776 空からの爆弾もレニングラード市民に 降伏を強いることはできず 673 00:55:47,260 --> 00:55:49,224 冬もまた、 674 00:55:50,236 --> 00:55:51,840 飢えもまた同じであった 675 00:55:53,112 --> 00:55:56,160 そのためドイツ軍は 砲撃を試みた 676 00:55:59,784 --> 00:56:06,024 何日にも渡り長距離砲が 街の中心に大量の高性能炸薬を叩き込んだ 677 00:56:31,572 --> 00:56:36,552 しかしレニングラード市民は 砲撃が激しくなるごとに一層労働に励んだ 678 00:57:04,824 --> 00:57:09,696 高性能炸薬の雨に降られ ロシアの残りの部分から孤立し 679 00:57:09,696 --> 00:57:12,384 自らの両手のみを頼みとしながらも 680 00:57:12,912 --> 00:57:15,096 彼らの決意は決してくじけなかった 681 00:57:16,128 --> 00:57:18,264 日ごとに人が死んでいった 682 00:57:19,036 --> 00:57:20,088 寒さで、 683 00:57:21,672 --> 00:57:22,608 病で、 684 00:57:24,168 --> 00:57:24,984 飢えで 685 00:57:26,952 --> 00:57:29,760 これがレニングラードにとって 最も厳しい時であった 686 00:57:33,456 --> 00:57:35,208 そして奇跡が起きた 687 00:57:35,208 --> 00:57:38,376 レニングラードの西には バルト海が広がっている 688 00:57:38,376 --> 00:57:40,584 東と北にはラドガ湖がある 689 00:57:40,584 --> 00:57:43,776 1万6千平方キロの内水である 690 00:57:44,664 --> 00:57:49,488 フィンランドとドイツが 北からこの辺りまでを占領していた 691 00:57:49,704 --> 00:57:52,872 南ではドイツがここまでを押さえていた 692 00:57:53,832 --> 00:57:58,272 これらに挟まれた湖岸は まだロシアの手のうちにあった 693 00:57:58,272 --> 00:58:03,168 しかしこの湖岸と包囲下の街とは 160キロ近く離れている 694 00:58:04,248 --> 00:58:09,000 それまで水面であった160キロは 今や雪に覆われた氷である 695 00:58:22,320 --> 00:58:25,560 この氷の上をトラクターが、 696 00:58:25,656 --> 00:58:26,808 またそりが進み 697 00:58:27,192 --> 00:58:29,784 湖を横切る道を作ったのだ 698 00:58:33,792 --> 00:58:39,984 すぐにこの道路を トラックが走りはじめ 699 00:58:41,452 --> 00:58:43,176 食料を、 700 00:58:43,848 --> 00:58:45,000 石油を、 701 00:58:45,700 --> 00:58:46,752 穀物を、 702 00:58:47,568 --> 00:58:48,576 燃料を、 703 00:58:49,152 --> 00:58:53,928 命をレニングラード市民に届けたのだ 704 00:58:57,460 --> 00:59:01,968 ドイツ軍もこの救援道路を発見したがもう遅い 705 00:59:26,764 --> 00:59:30,576 爆撃機が道を爆撃したが トラックは走り続けた 706 00:59:30,576 --> 00:59:33,120 昼も、夜も 707 00:59:34,296 --> 00:59:36,408 湖上の道路は休まなかった 708 00:59:36,658 --> 00:59:39,648 やがて、街に向かうのは トラックだけではなくなった 709 00:59:39,648 --> 00:59:43,224 湖上に線路が敷かれたのである 710 00:59:48,964 --> 00:59:54,936 一番列車の機関車の垂れ幕には 「レニングラードの英雄に」と書かれていた 711 00:59:54,936 --> 01:00:01,880 対岸から食料、医薬品など あらゆる補給物資が 712 01:00:01,880 --> 01:00:05,136 湖を越え レニングラードへと運ばれた 713 01:00:05,136 --> 01:00:09,720 この後にも無数の列車が走り 物資を届けただけでなく 714 01:00:09,720 --> 01:00:14,856 けが人、病気の女性 凍える子供たちなど 715 01:00:18,316 --> 01:00:21,048 より良い処置を必要とした人々を 街の外へと避難させた 716 01:00:21,556 --> 01:00:24,960 湖上の交通は 冬いっぱい動きつづけた 717 01:00:27,168 --> 01:00:35,544 そしてこの厳しい冬の間も 赤軍兵士は街の外で守り、そして攻撃した 718 01:00:38,448 --> 01:00:45,696 彼らは日ごとに強さを増し 敵を1インチずつ街から遠ざけていった 719 01:00:52,348 --> 01:00:53,904 そして春がやって来た 720 01:00:54,840 --> 01:00:56,016 春である 721 01:01:01,684 --> 01:01:05,212 レニングラード市外では雪が解けはじめ 722 01:01:05,212 --> 01:01:09,072 氷の墓の中のドイツ兵の死体が押し流された 723 01:01:09,648 --> 01:01:12,120 ロシア人の支配権の証である 724 01:01:13,588 --> 01:01:18,048 ラドガ湖の凍った湖面の上にも 暖かい春の息吹が達していた 725 01:01:18,700 --> 01:01:21,144 それでもトラックは走り続ける 726 01:01:21,144 --> 01:01:24,000 たとえ氷が解けようとも 727 01:01:32,280 --> 01:01:36,432 同様に、街にも春が訪れた 728 01:01:41,088 --> 01:01:44,448 しかしレニングラード市民にとって 春は単なる新しい季節以上の意味を持つ 729 01:01:45,144 --> 01:01:46,224 それは新たなる生活である 730 01:01:46,756 --> 01:01:48,888 都市が息を吹き返した 731 01:01:51,480 --> 01:01:54,576 何ヶ月ぶりかに路面電車が走った 732 01:02:00,576 --> 01:02:05,688 この日ばかりは街の男も女も、子供たちも 何としても乗らねばならないような気になった 733 01:02:10,684 --> 01:02:12,816 生活が蘇ったのである 734 01:02:13,780 --> 01:02:16,080 レニングラードの子供たちにも 新たな生活が始まった 735 01:02:16,080 --> 01:02:19,944 厳しい冬のナチの爆撃を 生き延びていれば、ではあったが 736 01:02:20,664 --> 01:02:24,336 ロシアのWACたち、 赤軍の女性兵士たちにも 737 01:02:24,628 --> 01:02:28,464 ロシアのWAVEたち、 赤色海軍の女性兵士たちにも 738 01:02:28,800 --> 01:02:31,248 そして海軍の水兵のもとには 739 01:02:31,248 --> 01:02:35,616 有名なバレエ劇場の 芸術家たちが慰問に訪れた 740 01:03:08,500 --> 01:03:12,312 春が訪れ 夏が来ようとしていた 741 01:03:12,528 --> 01:03:15,240 そしてレニングラードは 未だ自由である 742 01:03:15,490 --> 01:03:19,920 しかしいくらかのドイツ兵は ついに街に入ることができた 743 01:03:21,844 --> 01:03:25,104 彼らの期待したのとは 大きく違った様子であったが 744 01:03:30,224 --> 01:03:35,568 そう、ここでもナチの不敗神話は 打ち砕かれたのである 745 01:03:35,568 --> 01:03:39,648 決意を固めた人々の 鉄の意志と勇気とによって 746 01:03:40,128 --> 01:03:42,912 そしてレニングラード市民も このことを証明したのだ: 747 01:03:42,912 --> 01:03:48,432 戦闘に勝つのは将軍だが 戦争に勝つのは国民である 748 01:03:53,976 --> 01:03:59,736 1942年夏 モスクワ市街に新たなポスターが登場した 749 01:03:59,736 --> 01:04:03,288 同盟国を歓迎するポスターである 750 01:04:03,288 --> 01:04:06,672 同盟国の支援は すでにロシアの港に到着していた 751 01:04:09,432 --> 01:04:12,408 ロシアが最も困難な時を乗り切るため 752 01:04:12,408 --> 01:04:16,200 同盟国は医薬品や食料、 暖かい衣服を送り届けた 753 01:04:16,976 --> 01:04:19,824 しかし赤軍の将軍たちは 754 01:04:19,824 --> 01:04:23,136 彼らが未だに歴史上最も強大な敵と 戦っており 755 01:04:23,136 --> 01:04:25,272 敵は再び攻撃を仕掛けてくるということを 理解していたのである 756 01:04:25,272 --> 01:04:31,296 この時ドイツはその戦力のすべてを 一つの目標に集中させてくるであろう 757 01:04:31,296 --> 01:04:33,792 コーカサス、 そして石油である 758 01:04:34,248 --> 01:04:38,664 コーカサス山脈は 世界でも有数の軍事的障壁である 759 01:04:38,664 --> 01:04:42,682 5千メートル級の山々が連なり 760 01:04:42,682 --> 01:04:45,552 事実上1本だけの道路が それを貫いている 761 01:04:45,552 --> 01:04:50,064 そして最大の油田を持つバクーは この山脈を越えた所にある 762 01:04:50,064 --> 01:04:55,080 バクーに通じる唯一の軍事路線は カスピ海に沿った鉄道のみ 763 01:04:55,968 --> 01:04:59,904 しかしこの地図は補給線が 危険なまでに伸びきることを示している 764 01:05:00,336 --> 01:05:03,144 ドイツ軍がこの作戦を成功させるためには 765 01:05:03,144 --> 01:05:07,440 まずこの地域の鉄道網の 北の結節点を掌握し 766 01:05:07,440 --> 01:05:09,360 新たな拠点とすることが必要である 767 01:05:09,552 --> 01:05:12,912 ヴォルガ川に港を持つこの街こそが 今や我々のよく知るところとなった都市 768 01:05:12,792 --> 01:05:14,184 スターリングラードである 769 01:05:14,880 --> 01:05:17,016 ロシアの現在の指導者を名前に戴き 770 01:05:17,976 --> 01:05:24,072 現世代のロシア人により建設された 同世代の誇る都市である 771 01:05:25,660 --> 01:05:28,708 またナチにとって スターリングラードは 772 01:05:28,708 --> 01:05:31,800 側面からモスクワを攻撃するための 基地にもなり 773 01:05:32,500 --> 01:05:35,616 さらにこの一撃により これより南のロシア軍部隊を 774 01:05:35,616 --> 01:05:37,008 孤立させることもできる 775 01:05:37,008 --> 01:05:40,464 そして北のロシアの工場、 ロシアの農地、 776 01:05:40,464 --> 01:05:42,096 ロシア軍の部隊は 777 01:05:42,096 --> 01:05:45,048 コーカサスの石油を失い 778 01:05:45,048 --> 01:05:47,976 イランやイラクを通じた アメリカやイギリスの支援からも 779 01:05:47,976 --> 01:05:51,720 切り離されることになるのである 780 01:05:51,720 --> 01:05:57,408 ヴォルガへの入り口となる2つの港 アストラハンとスターリングラードが 781 01:05:57,408 --> 01:06:00,024 もしドイツ軍に支配されれば ロシアにとって大きな痛手となる 782 01:06:00,024 --> 01:06:04,296 ヴォルガ川は補給の 生命線となっているためである 783 01:06:06,868 --> 01:06:12,000 5月初め、ドイツ軍の攻勢が クルスクからクリミアに至る前線で開始された 784 01:06:14,256 --> 01:06:18,168 2週間のうちにナチのスチームローラーが ケルチ半島を席巻した 785 01:06:18,168 --> 01:06:22,584 さらなる2ヶ月でセヴァストポリの戦いが ようやく終結した 786 01:06:22,584 --> 01:06:25,704 ナチはクリミア半島を 完全に支配し 787 01:06:25,704 --> 01:06:28,776 コーカサスの油田への 南からの進路を確保したのである 788 01:06:28,776 --> 01:06:34,392 次にナチは北部で攻勢を始め ドン河畔のヴォロネジまで達した 789 01:06:34,392 --> 01:06:40,584 そして南東へと進み ドン川からロストフまでの全域を占領 790 01:06:40,584 --> 01:06:44,136 スターリングラードを狙う 絶好の位置についたのである 791 01:06:44,136 --> 01:06:46,800 さらに南へと攻撃は続けられた 792 01:06:47,328 --> 01:06:50,496 8月終わりには マイコープの油田を占領した 793 01:06:50,496 --> 01:06:53,568 あらかじめロシアの手で 破壊されていたことはいうまでもないが 794 01:06:53,568 --> 01:06:56,592 そして北コーカサスに達した 795 01:06:56,592 --> 01:07:02,088 そう、ドイツ軍はその目標の目前まで来ていた バクー油田である 796 01:07:02,088 --> 01:07:04,608 しかし2つの障壁がまだ残っていた 797 01:07:05,112 --> 01:07:08,736 ロシアの山々、 そしてロシア人の意志である 798 01:07:08,736 --> 01:07:17,064 コーカサスの人々は軍に加わり 敵の攻勢に不屈の戦いを挑もうとしていた 799 01:07:21,600 --> 01:07:25,560 北ではナチが2方向から スターリングラードまで25キロに迫っていた 800 01:07:26,476 --> 01:07:29,832 この都市がこの作戦全体の 焦点となるのである 801 01:07:32,044 --> 01:07:36,192 いかなる犠牲を払っても スターリングラードを占領せねばならない - 802 01:07:36,412 --> 01:07:38,400 これがドイツ軍司令部の 命令であった 803 01:07:41,500 --> 01:07:42,552 ドイツの火砲、 804 01:07:43,708 --> 01:07:45,192 ドイツの爆弾が 805 01:07:45,940 --> 01:07:48,024 街を粉砕した 806 01:08:01,996 --> 01:08:08,184 30日に渡る絶え間なき激戦の末 ドイツ軍は9月20日までに 807 01:08:08,184 --> 01:08:10,920 街の外縁部に到達した 808 01:08:17,952 --> 01:08:22,800 月末には街の北西部全体を制圧し 809 01:08:23,376 --> 01:08:28,104 鉄道駅を含む 中央部の占領に取りかかった 810 01:08:29,260 --> 01:08:34,800 9月末ヒトラーは声明の中で 街は数日のうちに陥落すると宣言した 811 01:08:35,016 --> 01:08:38,880 世界は再びロシアの敗北を危ぶんだ 812 01:08:38,880 --> 01:08:45,792 しかし再び勝利の間際にあったドイツ軍も なかなかそれを達成できなかった 813 01:08:48,268 --> 01:08:52,368 ここで彼らは未だかつてないほどの 激しい砲火に晒される 814 01:09:05,188 --> 01:09:09,360 彼らがこれまで戦ってきた どの都市での市街戦も、 815 01:09:09,360 --> 01:09:11,136 キエフも、ロストフも、 816 01:09:11,136 --> 01:09:13,464 オデッサも、セヴァストポリも、 817 01:09:13,464 --> 01:09:17,160 これからスターリングラードで起こる戦いの 序章にすぎなかった 818 01:09:24,744 --> 01:09:27,840 街では1インチごとが戦略要地であり 819 01:09:27,840 --> 01:09:30,408 また戦略要地として防衛された 820 01:10:23,212 --> 01:10:27,244 10月の終わりには 雪がスターリングラードを覆っていた 821 01:10:27,504 --> 01:10:32,232 ドイツは空からの攻撃で ロシアの支配地域を屈服させようとした 822 01:10:46,848 --> 01:10:50,544 同時に市街戦も続いていた 823 01:11:24,604 --> 01:11:30,720 しかし11月の初めには ロシアは都市を1インチごとに防衛する側から 824 01:11:30,970 --> 01:11:34,470 1インチごとに攻め込む側になっていた 825 01:12:11,188 --> 01:12:15,552 今や全世界がこの 「鋼鉄の街」の戦いぶりを賞賛していたが 826 01:12:16,056 --> 01:12:18,624 電信機のテープが さらに息をのむようなニュースを伝えた 827 01:12:20,788 --> 01:12:24,744 アメリカとイギリスの部隊が 北アフリカに上陸したのだ 828 01:12:24,744 --> 01:12:31,008 東ではイギリス第8軍が アフリカ軍団を西へと追撃 829 01:12:31,300 --> 01:12:34,758 北西では赤軍が大反攻を開始 830 01:12:36,480 --> 01:12:38,508 ドイツ軍は統合作戦の実力を 見せつけられることとなった 831 01:12:42,240 --> 01:12:46,704 縮められたバネが解き放たれたように ロシアは全戦線で攻勢を開始した 832 01:12:46,704 --> 01:12:51,912 北方でのシュリッセリブルク奪回が ドイツへの最初の一撃であった 833 01:12:51,912 --> 01:12:54,384 これにより枢軸軍による レニングラードの包囲が解かれた 834 01:12:54,384 --> 01:12:57,456 すぐに南へとさらなる攻勢が行われた 835 01:12:57,456 --> 01:13:02,856 ルジェフを守るドイツ軍を迂回して ヴェリーキエ・ルーキへと突入した 836 01:13:03,264 --> 01:13:06,312 もう一つの攻撃が ヴォロネジ方面で行われ 837 01:13:06,312 --> 01:13:09,624 ドイツ軍防衛線に深く食い込む 橋頭堡が形成された 838 01:13:09,624 --> 01:13:13,056 南ではドイツ軍が ロシア軍の攻撃により 839 01:13:13,056 --> 01:13:16,968 目指すグロズヌイから 遠ざけられていた 840 01:13:17,188 --> 01:13:21,024 スターリングラードのドイツ軍は 新たな敵に直面しようとしていた 841 01:13:27,148 --> 01:13:30,456 辺境から新たな予備軍が 到着していたのである 842 01:13:31,128 --> 01:13:34,200 彼らは日本との戦いに備えていたが 843 01:13:34,876 --> 01:13:39,720 スターリングラード防衛任務を交代するため 輸送されて来たのだ 844 01:13:48,248 --> 01:13:50,616 これらの予備軍が街に入るかたわら 845 01:13:50,616 --> 01:13:55,344 司令部では3人の軍司令官が 会議を行っていた 846 01:13:55,656 --> 01:14:02,280 褒賞目当てに戦うドイツ軍を 罠にかけるのである 847 01:14:02,496 --> 01:14:05,208 2つの攻撃が同時に開始された 848 01:14:05,208 --> 01:14:08,040 1つは北から、もう1つは南からである 849 01:14:08,040 --> 01:14:12,960 スターリングラードを包囲していたドイツ軍は 逆に包囲の危険にさらされた 850 01:14:12,960 --> 01:14:15,336 ついには2つの部隊が会合 851 01:14:23,764 --> 01:14:29,016 戦で鍛えられた 南北両軍の兵士たちが 852 01:14:29,016 --> 01:14:32,760 まるで無邪気な子供のように 喜びあった 853 01:14:32,976 --> 01:14:35,472 彼らは、この会合が スターリングラードを、 854 01:14:35,472 --> 01:14:38,448 そして祖国を救うことになると 知っていたのである 855 01:14:41,356 --> 01:14:44,400 この1942年のクリスマスを 856 01:14:44,400 --> 01:14:48,792 ソビエト連邦の市民は 幸福な気持ちで迎えることができた 857 01:14:48,792 --> 01:14:52,920 彼らは兵士たちから 最も貴重な贈り物、 858 01:14:53,716 --> 01:14:55,680 戦勝への確信を 得たのである 859 01:14:56,404 --> 01:15:01,224 我々の故郷同様モスクワでも この日は子供たちの日である 860 01:15:01,224 --> 01:15:03,840 この年のクリスマスは 去年より幸せだ 861 01:15:03,840 --> 01:15:07,296 頭上をドイツの爆撃機が飛ぶことは 今はもうないのだから 862 01:15:27,480 --> 01:15:32,352 例年ならばロシア人も我々同様に 大晦日からお祝いをする 863 01:15:32,784 --> 01:15:34,152 だが今は違う 864 01:15:34,924 --> 01:15:37,968 工場は他の夜同様に 忙しくしている 865 01:15:38,400 --> 01:15:41,832 そしてその時が来た 新年である 866 01:15:42,916 --> 01:15:44,760 あけましておめでとう! 867 01:15:50,860 --> 01:15:54,768 そして前線でも お祝いの言葉はおおむね同じだ 868 01:15:54,768 --> 01:15:57,192 親衛隊員諸君新年おめでとう、 撃て! 869 01:16:25,132 --> 01:16:28,992 スターリングラード市外では 凍てつく冬が炎熱地獄に変わる 870 01:16:36,796 --> 01:16:39,888 ここにはロシア軍の 最新兵器が集められた 871 01:16:40,688 --> 01:16:41,928 火炎放射機 872 01:16:43,776 --> 01:16:45,096 プロペラ付きソリ 873 01:16:45,216 --> 01:16:49,992 ここでは軍主力に先んじて飛行場を奪取する 強襲部隊が使っている 874 01:16:50,668 --> 01:16:52,128 ロケット砲 875 01:16:52,128 --> 01:16:54,288 ロシア人は カチューシャと呼んでいる 876 01:17:20,448 --> 01:17:25,992 敵を完全に破壊するために 赤軍は持てるだけの資源を投入した 877 01:17:43,440 --> 01:17:45,864 これが逆襲の 「くさびと罠」機動である 878 01:17:45,864 --> 01:17:49,614 今度はロシア軍ではなく ナチが罠にかかる番となった 879 01:17:51,336 --> 01:17:54,672 1943年2月2日 880 01:17:54,672 --> 01:17:59,472 162日にも及ぶ 軍事史上最大の戦いの末 881 01:17:59,472 --> 01:18:01,680 最後の弾丸が放たれた 882 01:18:04,804 --> 01:18:06,696 スターリングラードに平和が訪れたのだ 883 01:18:07,752 --> 01:18:11,788 破壊された街路に 吹き飛ばされた瓦礫が 884 01:18:11,788 --> 01:18:14,256 彼らの働きを物語っている 885 01:18:14,256 --> 01:18:19,128 夜明けに街の防衛軍が 増援部隊と会合した 886 01:18:23,644 --> 01:18:25,608 スターリングラードは自由となった 887 01:18:28,012 --> 01:18:29,784 ナチは降伏した 888 01:18:40,156 --> 01:18:43,176 これはいかなる犠牲を払っても スターリングラードを占領せよと 889 01:18:43,176 --> 01:18:45,312 ヒトラーに命じられ、 890 01:18:45,312 --> 01:18:48,840 この都市を彼のものにすると 従順にも約束した将軍たちだ 891 01:18:48,840 --> 01:18:55,968 これらの24人の将軍は 自らを名誉と勲章で飾ってきた 892 01:18:55,968 --> 01:18:59,904 だがポーランド、ノルウェー、 フランスの戦場で 893 01:18:59,904 --> 01:19:03,072 得た名誉も今や過去のものである 894 01:19:03,484 --> 01:19:05,472 このフォン・パウルス元帥は 895 01:19:05,472 --> 01:19:08,928 スターリングラードのドイツ軍の 総司令官である 896 01:19:09,792 --> 01:19:15,744 この男が、降伏しようとする部下たちに 家族の処刑をちらつかせたのだ 897 01:19:15,744 --> 01:19:20,616 彼自身が捕虜となった時、 同じ言葉が脳裏をよぎった事だろう 898 01:19:20,616 --> 01:19:24,144 ヒトラーが同じように 彼の家族を殺すかもしれないのだ 899 01:19:25,008 --> 01:19:29,856 そして彼が降伏したとき ヒトラーは元帥一人を失ったのではない 900 01:19:29,856 --> 01:19:32,136 一個軍全体を失ったのである 901 01:19:32,592 --> 01:19:36,720 22個師団、 33万人の兵士 902 01:19:39,100 --> 01:19:43,560 スターリングラードの征服者として 冬を戦い抜くと期待された者たちである 903 01:19:45,580 --> 01:19:50,016 確かに今は冬であり ここはスターリングラードであり 904 01:19:50,952 --> 01:19:52,608 彼らも一時は征服者であった 905 01:20:29,064 --> 01:20:34,344 そして新たな春がロシアに訪れたとき 冬の戦いの結果は明白だった 906 01:20:34,896 --> 01:20:39,600 侵略者は前年占領した土地の はるか後方にまで押し戻され 907 01:20:39,600 --> 01:20:44,088 48万平方キロもの ロシアの国土が解放された 908 01:20:44,088 --> 01:20:49,128 そしてこの1942年冬の作戦の中で 枢軸軍は 909 01:20:49,128 --> 01:20:50,976 航空機5,090機、 910 01:20:51,172 --> 01:20:53,976 戦車9,190両、 911 01:20:54,000 --> 01:20:56,880 火砲2万360門、 912 01:20:57,120 --> 01:21:00,360 機関銃3万705挺、 913 01:21:00,700 --> 01:21:03,264 小銃50万挺以上、 914 01:21:03,264 --> 01:21:05,352 砲弾1,700万発、 915 01:21:05,904 --> 01:21:08,304 銃弾1億2,800万発、 916 01:21:08,712 --> 01:21:11,016 その他大量の物資、 917 01:21:11,616 --> 01:21:16,992 兵員119万3,525人を失った 918 01:21:17,544 --> 01:21:19,896 そのうち80万人は死亡している 919 01:21:21,604 --> 01:21:25,492 これがドイツのロシア征服の試みの これまでの顛末である 920 01:21:25,492 --> 01:21:28,440 1941年はモスクワを攻め 921 01:21:29,256 --> 01:21:30,120 失敗した 922 01:21:30,888 --> 01:21:33,456 1942年はコーカサスを目指し 923 01:21:34,656 --> 01:21:35,640 失敗した 924 01:21:36,168 --> 01:21:39,816 1943年 そしてこの先何年もの戦いの中で 925 01:21:40,296 --> 01:21:44,352 彼らがどこを攻めようとも 彼らは抵抗され、 926 01:21:45,672 --> 01:21:47,112 攻撃され、 927 01:21:47,736 --> 01:21:48,552 攻撃され、 928 01:21:49,176 --> 01:21:50,208 攻撃されるであろう 929 01:21:50,208 --> 01:21:54,216 我ら連合国の 一致団結した国民によって! 930 01:22:16,768 --> 01:22:19,768 『民主主義の勝利は ドイツと日本の戦争マシーンを 931 01:22:19,768 --> 01:22:22,768 完全に敗北させることによってのみ 達成可能である』 932 01:22:22,768 --> 01:22:26,232 -G. C. マーシャル 陸軍参謀総長